「Webアクセシビリティ」に関するセミナー情報共有の後編では、すぐにでも実践可能な事項についてついてお伝えいたします。

セミナーにて提示された、すぐにでも実践可能な事項が下記のとおりです。

アクセシビリティ確保のキホンの「キ」

  1. ページタイトル:Webページの内容が分かるタイトルにする
  2. 文書構造:ページの領域や見出し、リストなどは、見た目だけではなく、適切にマークアップする
  3. リンクテキスト:ユーザーがリンク先に行くかどうかを判断できるような文言にする
  4. 画像:代替テキストを提供する
  5. フォーム:フォームコントロールとラベルをマークアップによって関連付ける
  6. エラーメッセージ:項目名、エラー内容、修正方法を分かりやすく説明する
  7. キーボード操作:全ての機能は、キーボードだけでも同じように操作できるようにする
  8. フォーカスインジケータ:キーボード操作時にフォーカスの現在位置が常に分かるようにする
  9. コントラスト:文字色と背景色のコントラスト比を4.5:1以上にする
  10. 動画:音声が伝えている情報をキャプション(字幕)にする

(株式会社インフォアクシア提唱)

これらの実施項目は記載のとおりキホンの「キ」であり、公的機関のWebサイトに義務付けられている「JIS X 8341-3:2016」の達成には、さらに細かな項目の達成が必要となります。なお、「JIS X 8341-3:2016」には適合レベルがA,AA,AAAと3段階あり、総務省のガイドラインでは、諸外国でも公的機関に求められるレベルとして「AA」の達成が推奨されています。

1~6番においては、W3CによってあるべきWebの形態として制定されたHTMLの規定に基づくコーディングを行うことで、自然と達成される事項であると思います。

9番:コントラスト比

WebだけでなくDTPでも関わってくる点として、色に関する要件があります。

【1】1.4.3 コントラスト

『テキスト及び文字画像の視覚的提示に、少なくとも 4.5:1 のコントラスト比がある。(JIS X 8341-3:2016/レベルAA)』

色覚特性のある方や高齢者だけでなく一般色覚の方でも、コントラスト比が低ければ、文字を読みづらいと感じてしまいます。
コントラスト比を適切に確保することで、すべての閲覧者にとっての読みやすい成果物が提供できます。

【2】1.4.1 色の使用

『色が、情報を伝える、動作を示す、反応を促す、又は視覚的な要素を判別するための唯一の視覚的手段になっていない。(JIS X 8341-3:2016/レベルA)』

色覚特性のある方々は、色の区別がつきにくい場合があり、情報を伝える手段が色「だけ」に頼った図や文書はJIS規格上、認められていません。
Webにおいて例を挙げると、「テキストリンクの表現が色のみ」「メールフォームのエラー項目の表現が色の違いのみ」。DTPでは、「表や地域の表現が色だけで分類されている」といった成果物が該当します。

  • 「テキストリンクの表現が色のみ」→文字に下線を設定する
  • 「メールフォームのエラー項目の表現が色の違いのみ」→文頭にアイコンを設置する
  • 「表や地域の表現が色だけで分類されている」→凡例の記載、エリアごとにテクスチャをかえる など

コントラスト要件と併せて「色の区別がつかなくとも情報を取得できる成果物」の制作を心掛けたいところです。

10番:動画の字幕

アマゾンやネットフリックスが提訴された際、原告側から求められた事項でもありますが、動画への字幕設定により恩恵を受けられる方は、視覚や聴覚に障害のある方々にとどまりません。

●動画に字幕を設定することで得られる利点

  • 音が聞こえにくい騒々しい環境でも字幕を通じて内容を把握できる
  • 視聴者が慣れていない言語でも字幕と併せて内容を理解しやすくなる
  • 言語を学習中の方には、話し手の内容を音声と文字の両方で取得でき理解が深まる

実際の現場では、主にクライアントからの指示によって、配色を含めたあらゆる情報に変更が入ると思います。受託案件であれば、最終的な判断はクライアントになりますが、受けた指示をそのまま反映するだけでなく、その成果物を閲覧、利用する方々の立場から、デメリットやリスクを伝達することも制作者の責務だと思います。

参考情報

●セミナーにて使用された資料【一般公開禁止】(PDFファイル:約5.76MB)

●総務省「地方公共団体等におけるホームページのバリアフリー化に関する講習会」(2016年9月~11月)
http://www.soumu.go.jp/main_content/000438394.pdf
特に公的機関のWebサイトにおけるウェブアクセシビリティの重要性がまとめられています。

●W3C
正式名称「World Wide Web Consortium」。Webの各種技術の標準化を推進するために設立された標準化団体。

●コーディング
HTML言語を用いてプログラムのソースコードを記述する作業を指します。

●JIS X 8341-3:2016 試験実施ガイドライン(達成基準チェックリストの例)/ウェブアクセシビリティ基盤委員会
https://waic.jp/docs/jis2016/test-guidelines/201604/gcl_example.html

●株式会社インフォアクシアについて
国内企業向けに、Webサイト評価、ユーザビリティテスト、方針策定、ガイドライン作成、教育・研修、制作会社サポート、『JIS X 8341-3:2016』に基づく試験の実施などを通じて、Webサイトのアクセシビリティ確保や『JIS X 8341-3:2016』、『WCAG 2.0』などの規格やガイドラインへの対応を支援する企業です。
同社代表の植木 真(うえき まこと)氏は、Webアクセシビリティ・コンサルタントとしてWebアクセシビリティの標準化活動にも従事し、日本工業規格の『JIS X 8341-3』では2004年の初版、2010年の改訂版と続けて、日本規格協会の原案作成ワーキンググループ委員として参加。2012年10月には、情報通信アクセス協議会ウェブアクセシビリティ基盤委員会(WAIC)の委員長に就任。2014年度の『JIS X 8341-3』改正原案作成委員会の委員長及び分科会主査に続いて、2015年度には総務省『みんなの公共サイト運用モデル』2015年度改定に関する研究会の構成員も務めています。