先日、『ある老舗どら焼き店の「どら焼きをリニューアルしました」という広告が話題になっている』、という記事を見ました。
2018年3月に公開された広告とのことですが、じわじわと広まっていき、私は2018年7月末に知りました。
この広告では、どら焼きを改良した点をクイズで答えるという企画も実施したところ、SNSなどで話題になりキャンペーンには3,000件を超える投稿が集まったとのことです。
早速見てみましたが、一見とてもシンプルな広告です。なぜ話題になっているんだろう…?と思いながら見ていると、あることに気が付きました。

この文章に含まれている「文字を多少入れ替えても、その文章を読むことができる」ことを『タイポグリセミア現象』というそうです。(公式な名称ではなく、俗称とのこと)

この「タイポグリセミア現象」が面白いと評判になり話題を呼んでいるのですが、まず「タイポグリセミア現象」を知らないとこの広告は生まれない…。そのことを考えたとき、当たり前ですが「知っている」と「知らない」では発想に大きな差が生まれると思いました。また、著名なクリエイティブ・ディレクターさんが書かれた「センスは知識からはじまる」という書籍がありますが、そのタイトルが頭をよぎりました。
そしてこの「タイポグリセミア現象」を使った広告を制作することによって起こるであろうことを読めていた、今回制作されたクリエイターさんの知識・視野の広さにひれ伏しました。

広告を見て、広告文の謎に気付いた後、誰かに言いたくなるし見せたくなる…、この遊び心が話題になり広まっていったのだと思います。
また、世の中にはどちらかというとインパクトのある単語で目を引く広告が多い中、この広告には普通の言葉が並んでいます。
しかし、この広告には「タイポグリセミア現象」という仕掛けにより、文字をじっくり読んでもらうことができ、リニューアルしたということを知らせる目的も果たしています。
さらに結果としてこの広告は富山ADC賞という広告賞も受賞されています。

街を歩いている時、雑誌をめくった時などさまざまな広告を見かけます。一昔前であればインスタグラムから「最近こういうのよく見るなあ」と思って流行を実感したり、今回のように単純に刺激を受けたりと発見する面白さは尽きません。
今回、著名を起用した華やかな広告でなくても、頭一つでこうやって話題になり広告として評価される、という知識の大切さ・クリエイティブの幅広さを改めて再認識しました。