先日、会社近くの駅に気になるポスターが掲示してありました。
全面に写真がドーンと1枚、大きく使用されており、文字が少しだけ。
写真の割合が8~9割、文字は2割もないくらいのスペースにさらりと書いてあるだけの大胆な構図。

私がそのポスターを見かけたのは通勤中。特に朝はラッシュの人の流れに押されるように歩いているため掲示物を立ち止まって見る余裕はありません。
たまたま全面に使用されている大きな写真が目に入り、「うーん、あれは何の掲示物だろう」その日はそんな風に思っただけでした。

そしてその数日後、会社を出て歩いている夜にまた同じポスターが目に入ります。
すっかりそのポスターの存在は忘れていましたし、同じく立ち止まることなく片目でそのポスターを見るだけ。
「ん?この前見た写真のやつ、何か文字があるけどなんて書いてあるのかここからじゃよくわからない。何のポスター?」
少し離れた場所を歩いていたため、ほとんど文字を解読できずにまたその前を通り過ぎました。

そして翌朝、ポスターの間近を通った際には意識して注意深く見ていたため、ようやくそのポスターの内容がわかります。
それはとある学校とコラボしたとある施設への誘致ポスターでした。

そのポスターは、大胆なデザインであるということで、目をひくデザインではありました。
私も気になって3回も見てしまったほど。しかし、短時間の初見では肝心の内容がうまく入ってこない。
これは、恐らく多くの人に見落とされてしまう弱点なのではないかとも感じました。

デザイナーという職業柄、ポスターや広告物などはデザインを分析しながら見ることもありますが、ほとんどが単純に掲示されている情報を得るために見ています。
意識的にでも、たまたま目に入っただけでも、展示会やイベントなど気になることを見つけたら、そのタイトルや場所をスマホで検索し、興味があれば実際に足を運ぶこともよくあります。これは、特にデザインを意識せず街を歩いている多くの人々と同じ行動です。

特に、駅の通路などに掲示してあるイベントや施設紹介系のポスターが大きくキャッチコピーやイベント名・施設名を配置しているものがたくさんあります。
時には大きすぎるのでは?と思うものもなくはないですが、その理由が今回の出来事で改めてよく分かりました。

考えてみれば当たり前なのですが、駅のポスターには「駅」という場所柄、誰しもが何処かへ移動するために歩いているため、目をひくデザインと共に、歩きながらでも分かるくらい見えやすいデザインであることが求められているのです。

近年はスマホで簡単に情報を検索できるため、ポスターに求められているのは、初見で興味をひくこと、そして検索などの行動につなげることだと思います。
(ターゲットや内容にもよりますが)
しかし同じ内容の告知でも、それがフリーペーパーのような読み物の広告として入稿されていたら、デザイン要素は同じまま、文字のサイズや文字が占める全体の比率も変化するはずです。公開される情報の量も異なってくるでしょう。もちろん、Webではさらに違う情報量やレイアウトになるはず。
同じものに対するデザインでも、使用媒体や目的などが異なれば、単純な変倍だけでは済まないのです。

やはり、目的や意図、使用媒体や使用方法、その都度必要に応じたデザインが求められています。
制作物の依頼では的確にそれらの内容をデザイナーと共有したほうが良い物が出来上がってくるでしょう。

当たり前ですが、忘れがち。駅のポスターからそんなことを改めて学びました。