前回デザインに使いやすい写真の説明をしましたが、今回は写真自体の表現について考えてみます。

以前写真の話をしている時に、ある非デザイナーが「周りがボケてる写真ってプロっぽい」と言っていました。
その人が指した「周りがボケてる写真」とは、つまり、被写界深度が浅く前景または背景がぼやけたように見える写真のことだと思います。
これはポートレートなど人物がメインの写真や花などの写真で使われやすい表現で、被写界深度を浅くして、ある1点にピントが集中しているため「主題の被写体がより際立って見える」という効果があります。

被写界深度(ひしゃかいしんど)とは、写真の焦点が合っているようにみえる被写体側の距離の範囲のことです。
被写界深度を深くすれば、手前から奥までピントがあっているようにみえ(A)、逆に浅くすれば設定した点以外の背景や前景がぼやけててみえます(B)。

一般的に旅行などでスナップ写真を撮影することを目的としているコンパクトカメラなどは元から被写界深度が深く設定されていることが多く、反対に、一眼レフのようなカメラでは、絞りやシャッタースピードなど細く設定が可能できるため、撮影したいものに応じて被写界深度を変更することが出来ます。
絞りやシャッタースピードについては語ることを避けますが、多くの場合、望遠レンズを用いて「絞り」を開いた状態で撮影すると、被写界深度が浅くなり主役のみにピントを当たった背景や前景がぼけた写真になります。レンズによって被写界深度の範囲もボケる形状も異なります。

ちなみにボケ表現を使用した写真は「ボケフォト」などと呼ばれ、Instagramで人気のタグの一つです。外国でもボケはそのまま「Bokeh」と呼ばれており、Wikipediaによるとどうやら日本発祥の撮影方法?とのこと。

「プロっぽい」と感じた理由は、恐らく一眼レフのイメージが強かったからかと思いますが、今はコンパクトカメラでも調整ができる機種が発売されており、スマートフォンでもポートレート機能が備わっていたりアプリで被写体以外の周囲を認証して勝手にぼかしてくれるような加工も簡単にできるようになりました。

ポートレート撮影や花などの写真で使われやすい、と述べたとおり、主題以外がボケてしまうため「建物と人物」など全景を写したい写真には向いていませんが、逆に言えば、シンプルに商品や料理などメインのものを目立たせたい場合は周りがボケた写真のほうが有効かもしれません。

独自に撮影を行う場合はもちろん、ロイヤリティフリーの画像などを使用する場合も、撮影方法や表現が与える印象を考えながら、目的に合わせた写真を選ぶことが大切です。