先日「Webアクセシビリティ」に関するセミナーに参加してきましたので情報共有いたします。前編では、アクセシビリティを取り巻く状況についてお伝えいたします。

 

●「アクセシビリティ」とは
アクセシビリティとは「情報やサービスへのアクセスのしやすさ」を意味します。
高齢者や障害者だけでなく、あらゆる人が、どのような環境(騒々しい場所、暗い場所、明るい場所など)においても、情報やサービスへアクセスしやすい状態であることを指します。

Webアクセシビリティとは、Webページにある情報の取得や機能を、前述のような状態に関わらず、利用しやすい状態であることを指します。

さまざまな利用者が、さまざまなデバイスを使い、さまざまな状況でウェブを使うようになった昨今において、Webアクセシビリティの重要性は高まりつつあります。

 

●世界的に広がるWebアクセシビリティ
アメリカ、カナダ、オーストラリア、ニュージランド、韓国では、Webアクセシビリティへの対応を法律で定めており、過去には、ディズニー(2012年に和解)やAmazon、Netflix、Hulu
(いずれも動画配信サービスに対し、聴覚障害者が字幕の付与を求め提訴)、MLBなどの組織がWebアクセシビリティを満たしていないとして訴訟された経緯があります。

なお、世界初の訴訟事例は、2000年開催のシドニーオリンピック公式サイトが知られており、2020年開催予定の東京オリンピック公式サイトでは「JIS X 8341-3:2016(後述を参照)」に準拠することを目標にWebサイトの整備が進められています。

・ウェブアクセシビリティについて/東京オリンピック公式サイト
https://tokyo2020.org/jp/accessibility/

余談ですが、東京オリンピック公式サイトのWebサーバーは、全世界のインターネット通信量の最大30%のシェアを有し、世界130か国以上に約230,000台以上のサーバを設置している、世界最大手のCDN(コンテンツデリバリネットワーク)事業者「アカマイ・テクノロジーズ(Akamai Technologies, Inc./NASDAQ上場)」によって支えられています。

 

●日本でのWebアクセシビリティ
国内では2016年4月1日に施行された「障害者差別解消法(障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律)」により、JIS(日本工業規格)「JIS X 8341-3:2016」が公開され、下記のように条件付きで義務化されました。

・問題を指摘された際に過度な負担でない限り
・対応が義務化されるのは公的機関まで
・民間企業においては可能な限り対応するという努力義務

・JIS X 8341-3:2016 解説(ウェブアクセシビリティ基盤委員会)
https://waic.jp/docs/jis2016/understanding/201604/

 

●Webアクセシビリティは高齢者や障害者だけに留まらない
Webアクセシビリティは障害のある人や高齢者だけに関係するものではなく、Webを使うすべての人のためのものであり、障害のために「見られない」「聞けない」といったことだけではなく、「見たり聞いたりできない状況」「見づらい、聞きづらい状況」「操作しづらい、操作できない状況」は、Webを利用するすべての人に起こりうることです。
そのため、あらゆる環境でWebを利用する方々に、分け隔てなく情報へアクセスしてもらえることが、Webアクセシビリティの主たる目的となります。

 

続きは後編「セミナー共有:Webアクセシビリティについて<後編:Webアクセシビリティの実践>」にてご紹介します。
実践事項の一つである「配色」については、Webはもちろん、DTPにも深く関わります。