紙面制作では必ず最後に「用紙選び」という作業が発生します。目的や予算を考慮して、また少し特別なものであればデザインを活かす用紙を…といったようにその選び方は様々ですし、「印刷加工」を施す場合もあります。もちろん「良い用紙を使ってもそんなに制作物の売上や目標達成度合いは変わらない」場合もあると思います。

ただ、紙の持つ物質性なのか、ずっと触っていたいと思うような素敵な用紙は印象に残ります。それはその制作物やデザイン自体もずっと残るものとしてくれると思うのです。名刺などの手から手へ渡るものや、記念誌のように後からまた見たくなるものには特に重要です。

私は小さい頃、絵本が好きでよく読んでいました。その中で印象に残っている絵本があります。理由は内容ではなく用紙です。昔は絵本といえば「ツルツルの表紙」がほとんどだったと記憶しています。ただ、この一冊は私が沢山もっていた本の中でも「サラサラの表紙」だったのです。
手触りがとても気に入っていたので、サラサラで気持ちいいとよく表紙を触っていましたし、子供心に「こういうのあるんやな」と思っていました。そしてその絵本は今も持っています。

今年の夏前に参加したセミナーでも、他のメディアと比較した印刷媒体の訴求力・浸透力の源泉として「モノ・五感」が紹介されていました。
またセミナーで講演された別のデザイナーの方が、「デザインをする時に大切にしている6つの要素」を説明していましたが、その中に「物質性:感覚を刺激する」が入っていました。改めて印刷媒体では手に取ったときの「物質性」は重要なのだと感じました。

用紙選びや印刷加工のハードルは高く、コストや納期など優先順位もあります。それらをふまえた上で、クライアントの目的を叶える選択肢のひとつとして最善の選択ができるよう意識しておきたいと思います。