Web業務では非公開に開発や制作を進めてきた情報成果物を一般向けに公開する「公開作業」があります。業界では「リリース」や「ローンチ」など英語で呼ばれることもあります。

■公開作業の主な作業リスト
「公開作業」の内訳は概ね下記のようなタスクとなります。

・データ転送(ファイル転送)
・データインポート(データベース設定)
・検証作業(複数ブラウザによる閲覧検証、動作検証)
・Google アナリティクス 基本設定
・Google アナリティクス コンバージョン設定
・Google アナリティクス リアルタイム計測によるトラッキング確認
・Google Search Console 基本設定
・Google Search Console XMLサイトマップ作成、申請
・Google インサイトによる読み込み速度の確認
・WordPress 管理画面へのアクセス認証(またはIPアドレスによるアクセス制限)
・WordPress 自動メジャーアップデートの停止処置
・WordPress 検索エンジン読み込み許可

●データ転送(ファイル転送)
Webサイトやシステムを正常に閲覧、稼動させるために必要なファイルを作業用パソコンからWebサーバーへ転送します。

CSSやWebフォントといったWeb関連の技術が進歩したことで、10年前と比較して、対象となるファイル数も少なくなりつつありますが、小規模なWebサイトや縦に長い1ページのシングルページでも50ファイル程度になります。

JR西日本の路線図コンテンツでは、西日本管区の路線を4階層からなる地図形式で表現するため、地図部分のみで10万ファイルを超えるファイル転送が必要になります。
このような場合、漏れなく確実に速やかに転送するため、作業用パソコン内で圧縮を行い、1ファイルにまとめて転送しサーバー上で解凍する、といった手法も用いられます。

・JR西日本の路線図コンテンツ
https://www.jr-odekake.net/eki/route.html

●データインポート(データベース設定)
WordPressやMODX等、更新管理システムの導入を伴う案件では、情報の管理にデータベースを利用するため、ファイル転送作業と併せて、開発環境から本番環境へのデータベース移行も行います。

多くの場合、開発サーバーと本番サーバーの仕様は異なるため、公開作業前に「仕様の差」を事前に確認のうえ、公開作業時に行うべき設定変更やデータ形式の変更を事前に行うなど、公開作業に要する作業時間を極力抑え、速やかな公開を目指します。

●検証作業(複数ブラウザによる閲覧、稼動確認)
データの転送完了後には、Webサイトが意図した状態で閲覧できるか、意図した挙動がなされるか、を確認する検証作業を行います。

現在、世間には各開発団体から様々なブラウザが公開されています。存在するすべてのブラウザで検証作業を行うと、膨大な工数を必要とするため、Web事業部では「標準的な検証ブラウザ」を定め、受託時に取り決めています。

・標準検証ブラウザ
PC:Internet Explorer 11
PC:Chrome 最新 / Firefox 最新
スマートフォン:iPhone8 Mobile Safari(iOS12以降)
スマートフォン:HUAWEI/LX2J Chrome最新(Android8.0以降)
タブレット:iPad A1458 Mobile Safari iOS10.3

「Chrome」と「Firefox」はブラウザが自動的に更新されるため、取り決め時点では最新のバージョンと定義し、公開時のその時点における最新バージョンにて検証します。
JR西日本の路線図コンテンツのように公共性の高いサービスを提供する企業では、上記のような主要なブラウザだけでなく、ブラウザ種別数、OSの種別数ともに10を超えるブラウザにより、公開の都度、検証が行われます。

検証内容は主に見た目の「閲覧検証」とメールフォーム等の挙動を見る「動作検証」に分かれます。

「閲覧検証」は、公開作業前のテスト環境内で実施されていますが、漏れを防ぐために改めて確認します。
前述のとおり、開発サーバーと本番サーバーの仕様は異なる事案が多く、仕様の差異が動作に何らかの影響を与えるケースが多く発生します。そのため、公開作業時における検証作業の中心は「動作検証」になります。

「動作検証」では、リンクボタンをクリック、タップした際、意図したページへ移動するか、マウスをかざした際にボタンの配色、濃淡は意図どおりに変化するか、といった基本的な挙動から、JavaScriptによるボタン開閉の挙動やメールフォームの送信テスト、管理画面へのログインやお知らせの更新テスト等、実際に利用する項目を漏れなく確認します。

人が目視で行う目視確認に加え「Link Checker」と呼ばれる、リンク先を自動巡回し、サーバーからの応答内容によってリンク切れやその他のエラーを検出するソフトウェアを併行して利用し、Webサイトの品質を確認しています。

次回は「Google アナリティクス 基本設定」以降の作業手順をご紹介します。