自社のWebサイト制作の発注に慣れていない企業にとって、その納期は分かり辛いと思います。中小企業の割合が99.7%を占める国内において、慣れているケースは稀なことでしょう。

そのためクライアントと直接やりとりをする立場のディレクターには、あらゆる局面において“分かりやすく納得性の高い説明”が求められます。その局面のひとつに制作納期があります。

クライアントがもつ希望納期は、実に様々で明確に決まっている場合もあれば、“何となく”といった場合も少なくありません。クライアントの意思を最大限尊重することは大前提として、私は納期の背景を必ずヒアリングしています。

キャンペーンと連動したWebサイトのように、公開日を死守しなければならない案件もありますが、納期を最優先事項とした以上、1日に割り当てられる時間の上限は決まり、制作時間、校正の回数等、どうしても品質面において妥協せざるを得ない状況になります。

キャンペーンサイトであれ、企業サイトであれ、Webサイトの制作には必ず目的があります。納期に収まったものの、目的が未達成であれば本末転倒であり、ディレクターの仕事としては不十分といえます。

ヒアリングは、希望されている納期がWebサイトの目的達成のために、またクライアント自身が抱える課題解決になりえるかを確認するために行います。希望されている納期が、目的達成のため、クライアントの利益のためにならない場合は、制作に要する工程やクライアント自身が行わなければない作業を丁寧に、平易な言葉で説明したうえで、制作物の変更や工程を見直し、目的達成するための実現可能なスケジュールを引き直すことがディレクター職責といえます。

希望に対する「No」回答は言い辛いものです。「No」の理由を納得していただけるように説明するコストが発生するためです。
「Yes」と回答した方がずっと楽なことでしょう。

もちろん説明を尽くしても、様々な事情により納得していただけない場合もあります。ただそれでも「No」を伝えたうえで進行するプロジェクトと、そのまま二つ返事で請け負ったプロジェクトでは、両者のプロジェクトへの覚悟が変わってくると私は思っています。
こうした本質を見失わないように日々のディレクションを行うことが重要だと思います。