11月の上旬に長堀の平和紙業にて“PAPER LAB. 「Playing」”という展示会が行われていたので、お昼休みにダッシュで訪問してきました。

平和紙業はファンシーペーパーなど特殊紙を主に取り扱っている会社で、10月上旬にグランフロントにて行われていたTAKEO PAPER SHOWを主催していた竹尾の競合です。
私はどちらの展示会も学生の頃から訪問しているのですが、どちらかというと竹尾のほうが大規模で実験的な提案の展示、平和紙業のほうが小規模ながら実用的な提案の多い展示会だと感じています。

今回の展示で面白いなあと思ったのは、「気になった紙を自由に持ち帰る」という行為を竹尾・平和紙業ともに訪問した人へ促していた点。特に、竹尾の展示会で感じた不便さを見事に平和紙業が克服してみせたことです。

竹尾のPAPER SHOWのお土産は、紙の倉庫をイメージした空間で、積んである紙をお土産に自由に破いて袋に入れて持って帰って良い、というスタイル。
そのため、紙の手触りもよく分かり、なおかつ紙を破くという背徳感にも似た行為が奇をてらっておりとても面白いアイデアだと思っていたのですが、いざ持ち帰ると、メモのない状態ではただの紙切れになってしまい、「この用紙の名前はなんだっけ」「何に向いた用紙なんだっけ」と、実際に使用したくなった場合はその小さな紙片からの問い合わせが必要です。

しかし、平和紙業のPAPER LAB.では、色相順に壁面へ並べられた瓶の中に入っている単語帳サイズの用紙を自由に選び、入口で渡された単語帳のリングに通して持ち帰れるようになっていました。
美しく並んだ瓶の中から選ぶ楽しさに加え、この「単語帳」というアイデアは、用紙の質感が分かる最低限のサイズで配布できます。また、用紙の情報と用紙の詳細がわかるWebページに飛べるQRが印刷されているため、色展開なども分かりやすく、実際の見本帳としても役に立つという点で竹尾のアイデアを上回っていたように思います。

どちらも同じ「紙を持ち帰る」というアイデアを形にしたものですが、2社のアプローチ方法はかなり異なります。

学生の頃、閉館間際に駆け込んだためか閑散とした平和紙業のギャラリーで、学生である私にも丁寧に説明をしてくださった担当者の方から「やはり皆さん行きたいと思うのは竹尾さんの展示会ですよね…」と弱音を吐かれたことがあるのですが、その時にも答えたとおり「そんなことはありません」。

競合と戦う場合、規模では敵わない場合でもアイデア次第で優位に立てることは多々あります。
竹尾の実験的な、紙や印刷の可能性を探る広い空間での展示会も参考にはなりますし、デザイナーとして刺激ももらえます。しかし、私たち制作側がクライアントから問われる「コスト」についても考慮しながら、特別な用紙をいかに身近に感じてもらうか、いかに面白いと思ってもらうかを考えた平和紙業の展示会には、自社の限られたギャラリースペースではありますが今回もかなり好感を持ちました。

私たちサンエイが大規模な競合と戦う場合にも「アイデア次第」であることは日頃からよく考えていますが、
そのアイデアのためにも、私たちのクライアントに向けて提案するにはまだまだ高価で手の届きにくい特殊紙についても用途や必要に応じて提案出来るような知識はやはりデザイナーとして持っておきたいと思います。