毎年この時期になると、来年の流行色「トレンドカラー」がPantone社から発表されます。
Pantone社(パントン社)はデザイン向けの色見本を扱っている会社(アメリカが本社)で、日本で馴染みのあるDICのようにPantoneというカラーチップを販売しており、世界中のあらゆるデザイン分野で使用されています。
洗練されたカラーチップのデザインを真似たプロダクトや、以前Softbankが発売していた携帯で見たことのある方もおられるかもしれません。

その会社が発表した来年2019年のトレンドカラーは、生き生きとした生命を象徴するサンゴの色合い「Living Coral」という、やわらかで赤みのかかったピンク色です。

Pantone社 Instagram

トレンドカラー(流行色)という名がついているとはいえ、ここで発表されているのはどちらかというとこれから「流行させる」色に近いと思います。

この「トレンド」というもの、消費者には知られていませんが、毎年世界の様々なトレンド発信の会社が一年ごとやシーズンごとに発表/販売しています。
これは遠く離れた国だけの話ではなく、実は日本でも大手企業ではデザイン・企画部署がトレンド発信会社の有料セミナーを受講し、数十万する高額な書籍を読み、それらを参考にあらゆるプロダクト(ファッション、メイク、インテリアや電化製品、パッケージなど)の生産を進めているのです。
(とはいえ日本のファッションやプロダクトには数年遅れで取り入れられたり、市場は前年度や今までの流行を引きずる傾向が強いとも言われています。)

では、その数十万の価値のある情報として発表されているトレンドたちが、全く新しい何か、0ベースから開発されたものであるかと言われるとそうではありません。
「以前から生活にあったもの」×「新しい色」や「新しい素材感」のように既存のものとの組み合わせや、以前流行ったものの「改良版」のようなイメージで提案されていることがほとんど。
今回のPantoneのカラーもサンゴという自然のカラーを取り入れていますし、私が以前読んでいた海外のトレンド誌も、日本の製品やゲームなどからヒントを得たり、自然のカラーや表現をテキスタイルの柄にとり込んだりしていました。

日々制作に追われていると目新しいインプットがなく、アイデアに困ることもありますが、日常のデザインには直接関係ないことや過去の資料からも学び、新しくアイデアが生まれることも多くあると思います。
改めてインプットの量や質について考えるとともに、久しぶりに各社が発表しているトレンドがどれだけ実際の生活に反映されていくかを観察してみようと思います。