世の中にすでに出回っている広告やチラシだからといって、それが正しいとは限らないなあ…と本当に実感する出来事がありました。

最近ご依頼いただいた案件の一つに、クライアントから「動員が悪かったのと、デザイン気に入ってないから変えて欲しい」といわれたA4両面のデザイン依頼があります。

パッと見た感じは無難に収まっているデザインのA4チラシではあったのですが、初見で違和感を感じる部分がいくつか。
まず、デザインが、想定されるターゲットの年齢や内容よりも少しポップで賑やすぎること。
また、全体的にイメージカラーだけを使用しておりメリハリが少ないこと。単調な色使いであることが情報を散漫に見せていてなんだか情報が頭に入ってこない感じがしました。
その他にも装飾やフォントの使い方なども少し作りが粗いところも見受けられます。

「確かにクライアントはこのデザイン気に入らないだろうなあ…」と依頼の意味に納得したのですが、
自分でデザインを一新すべく、じっくりと内容やテキストを確認しようとしたところ、その案件が抱えていた最大の問題点が判明します。

それは「構成」です。
メインキャッチの下に、全く異なる内容に関するメリットが並び、その下にメインキャッチの説明となる詳細、そしてまた全く違う内容に関するレビュー…と情報が混在しており、今自分がなにを読んでいるのかすらわからなくなるような構成になっていたのです。
異なる内容に関するオファーやメリットが混在しているうえ、一番の目的に向けた誘導を何度も意味のないところで繰り返していても恐らくターゲットにはうまく響かなかったはずです。
クライアントがこの構成に特に疑問を抱いていたのかどうかわからないのですが、動員が悪い理由にはこの情報が伝わりにくい構成も関係していたのではないでしょうか。

私は個人的にデザインは「情報整理」に近いと思っています。

もちろん表現力が必要になる部分も大いにありますし、デザイナーの良さや差を見つけようとすると求める表現に即したデザインを行うことは必要です。
が、ブランドのイメージポスターや写真集のようなものでない「広告」の場合は、まず求められるのはクライアントの主張を理解して、「何を一番目立たせるべきなのか」「どういう流れで誘導するのが良いのか」など情報を整理する力や分かりやすく構成する力が必要だと思います。

今回頂いた案件に関しては特にクライアントから「デザインが気に入っていない」という依頼だったので、印象を変えるだけで提出することはもちろん簡単です。
ただし、それで終了していては本来求めている動員の効果が得られたかは疑問です。

デザインを評価するというと、クライアントがデザインを気に入って頂けるかどうかに焦点が当たりがちで、与える印象やデザインの飾りなどに注目しがちですが、大元の構成はやはりとても大切です。
こうした構成に関しても日頃から様々な良い資料と悪い資料を集めておくべきだと切に感じました。